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事業のための経費を個人用クレジットカードで支払った場合はリボ払いを選択しない
事業の経費をクレジットカードで支払う場合、基本的に事業用のクレジットカードを使用するべきです。しかし、事業用のクレジットカードを持っていない場合には、個人用のクレジットカードで経費の支払いをしなければならないことがあるでしょう。
株式会社などの法人だと、従業員がクレジットカード払いで立替えた経費は、領収書と引き換えに現金で精算したり給与と一緒に振込んだりするのが一般的です。
しかし、個人事業主の場合は、事業用クレジットカードも個人用クレジットカードも、事業主本人が用途を分けて使うだけなので立替金の精算が発生しません。そのため、個人事業主が個人用クレジットカードで経費の支払いをした場合には、記帳を工夫する必要があります。
未払金勘定に計上する
個人事業主が、手許に現金がないなど何らかの事情で個人用クレジットカードで経費を支払った場合には未払金勘定に計上します。
例えば、5月1日に個人用クレジットカードで出張のための旅費1万5千円を支払ったとします。この場合、以下のように会計処理します。
5月1日の会計処理
- (借方)
旅費交通費 15,000円 -
(貸方)
未払金 15,000円
また、上記クレジットカードでの旅費の支払いが6月26日に預金口座から引き落とされた時には以下のように会計処理します。
6月26日の会計処理
- (借方)
未払金 15,000円 -
(貸方)
預金 15,000円
リボ払いにするといつ決済されるかわかりにくい
個人用クレジットカードで経費の支払いをしても、1回払いで決済していれば、カード会社からの請求明細でどの支出が事業用なのかを確認するのは簡単です。
しかし、リボ払い で経費の支払いをすると、当該支払額がいつ預金口座から引き落とされるのかを把握するのが困難です。
リボ払いは、毎月の支払額が1万円や2万円など一定額に設定されています。上記の例では1万5千円の旅費をリボ払いで支払っていますが、もしも、前月までのリボ払い残高が20万円あり、毎月1万円ずつ返済する設定にしていると、当該旅費は21ヶ月後に1万円、22ヶ月後に5千円が決済されます。しかし、この考え方は、毎月の返済が最も古いクレジットカードでの支払いから順に行われる先入先出法のような考え方を前提にしています。リボ払いの支払いと返済が紐付きの関係になっていなければ、このような先入先出法のような考え方が成り立つかどうかわかりません。
毎月元金1万円に利息を上乗せして支払う元金定額リボルビングなら、先入先出法を前提とすれば決済時期をあらかじめ確認可能です。しかし、元金と利息の合計額1万円を決済する元利定額リボルビングだと、旅費の決済時期を把握するのは非常に難しいです。金利手数料を支払利息勘定に計上しようとしても、いくらが旅費のリボ払いに対応する金利手数料なのかを把握するのも困難です。
したがって、個人用クレジットカードで経費の支払いをする場合は、リボ払いを選択しない方が無難です。
未払金ではなく事業主借を使う
しかし、資金繰りの都合で、どうしても経費の支払いを個人用のクレジットカードでリボ払いしなければならない事態が発生することがあります。
この場合、個人事業主は未払金勘定ではなく事業主借勘定を使って会計処理しましょう。
上記の1万5千円の支払いを事業主借勘定を使って会計処理すると以下のようになります。
5月1日の会計処理
- (借方)
旅費交通費 15,000円 -
(貸方)
事業主借 15,000円
事業主借勘定を使うことで、事業の会計と個人の会計を分離できます。なので、後日の個人用クレジットカードのリボ払いの返済は事業の会計に影響を与えず、返済時に会計処理は発生しません。ただし、クレジットカードの引落口座を事業用の預金口座としている場合には、事業主貸勘定を使って会計処理する必要があります。
例えば、6月26日にリボ払いの元金部分1万円と金利手数料1,000円が事業用の預金口座から引落とされた時に以下の会計処理をします。
6月26日の会計処理
- (借方)
事業主貸 11,000円 -
(貸方)
預金 11,000円
この方法だとリボ払いの金利手数料は一切損益計算書に計上されません。本来なら、事業用の支出から発生する金利手数料は支払利息となりますが、個人用クレジットカードでリボ払いを選択すると、いくらが事業用の金利手数料か把握するのが困難ですからやむを得ません。ただし、個人の支出は1回払い、事業の経費の支払いはリボ払いと明確に分けているのであれば、金利手数料は全額支払利息に計上できます。
リボ払いを選択するかどうかに関わらず、個人用クレジットカードでの経費の支払いには事業主借勘定、カード支払額の決済時には事業主貸勘定を使うのが望ましいでしょう。
なお、事業主借勘定と事業主貸勘定は、決算終了後翌年度に貸借対照表残高を繰越す時に元入金勘定に振替えます。したがって、翌年度の開始残高は、事業主借勘定も事業主貸勘定もゼロです。